朧の森たびたび(歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼 2024.12 新橋演舞場 おかわり)
一応注意書きしておきます→ネタバレ注意。
それと、長いです。(いつものこと)
キンタの"ほいほい義兄弟"の踊りが好きです
思えばやたら契約ごとの出てくる話で、守る気のない約束だからほいほいしちゃうんだろうねえ
絶対約束守らないマンと絶対約束守らせる森。
話もライもそんなに好きではないんですが、だんだん響くとこが増えてきたなと思ったらもう千穐楽で。
舞台って巻き戻して見られないんですよねえ。
鳴物(笛、太鼓、鼓、カネなど)、竹本・三味線、歌・BGM・効果音、ツケ、柝、セリフ。
これがシームレスにリレーされて絵とシンクロして聞こえる
バシッとはまったときの朧の踊りの振りと、歌。絶妙の間で「なんなんだよ」の合いの手を入れるライ。突如入ってくる竹本、割台詞、連携されていくやりとり。もしかして、これが見せたかったやつなのか? ぉぉぉ。ばっちし。
…って、それを初めて思ったときは既に観劇4回目。割と席に左右されるのは意外でした。
もしこれが毎回だったら、テーマソングが流れた瞬間にキタキタキターってなると思うの。
勝率が低い。
生音、肉声がそこそこ聞こえる席だとマイクを通した三味線や竹本の音に違和感があります。
意外とカッチリときたのは最前列。だがそこではスクリーンの絵が近すぎてなにがなんだかわからない。
2階がバランス良かった。殆どスピーカーからの音で聞こえるし、宙乗りも見えるし。
そしてこういうことは現地で初めて分かるのがつらいところ。円盤で正解の音を聞きたいものです。
同じ新感線の朧を原点として、幸四郎ライは幸四郎の芝居に、松也ライは松也の芝居に寄って、道が分かれていったのは面白かった。
夏には秀吉と光秀でばしゃばしゃやっていた二人。
それが同じ役をやってもなにか秀吉・光秀に通ずる色彩を見るようで。
圧倒的な幸四郎、変容する松也。
SNSでは皆が二人の違いを言い表そうと言葉を捻り出していました。
かつて、阿弖流爲と田村麻呂なら、人じゃない方が染五郎(幸四郎)なのは動かせないと思った。
それが朧では人のほうのライと人じゃないほうのライができちゃうとは。
二次創作向きなのは松也ライ・右近キンタ組じゃないかな。
あったかもしれない世界を描きたくなる。
あーちゃん(幸四郎)はもう、あーちゃんで完結だから、ほら。あったかもしれない世界とかないから。(しどい)
二階の奥の廊下に阿弖流為の衣裳が展示されていました。
やっぱ、阿弖流為好きだな。あの人も人でないものになったけど、裏切られて裏切られて、すべてを引き受けて鬼になった人だった。又見たかったな。
演舞場の森は閉じる。
阿弖流為のときのようにNEXTのための新しい朧が生まれたとは私には言えない。ええ、手前どもはまだまだ驚けますよ。驚き足らねえ。まだいけるぞー。
でも、不滅のライと、ちょっと甘酸っぱいもう一人のライが生まれた。それには乾杯。
1周目の感触を書いたあと観に行った時に書き留めたものを時系列で置いておきます。松也多いです。
あ、1周目で書いたものはこちらです↓
歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼(いっかいめ) | https://kirokubu.daynight.jp/kikuyamablog/archives/2661
12/15 昼 松也ライ
4列目センター
ワルだってキタキターって気分になるやつもあるじゃない
ライのことをそう見てるお客様もいると思いますが、私はどうもそういう待ってました!ではなくて、どよーんってなる。強いて言えば待ってるのは、導入部分の楽しいとこと、ぶっかえりと、鬼になって出てきたとこかなあ。
■朧の森の場面で歌謡曲めいたテーマソングが流れますが、自分は、サビの部分の曲調で思い出す曲があります。「蘇る金狼のテーマ」。松田優作の映画の主題歌です。改めて聴くと全然違うんですけどね。
正直、自分には、ライは全然わからんのですけど、蘇る金狼の朝倉みたいな種類の人間なのかもしれないなとも思う。(webで検索いただけますと筋までわかります。とーても酷いです)
この顔を持つものに出会ったときが転機である旨の一連の台詞を、歌舞伎NEXTではこの歌に集約してしまったので、初見ではことばに気づかないんではないかと思うんですよ。
森から出たときにライが復唱するからわかるけども。
セリフの方が聴こえるのになあ。
こちらが少し慣れたのかライの義太夫風の語りになる所は少し聞こえるようになりました
■オボロさん達
筋書の役名をみて、
オボロヒ?オボロミ、オボロツ…
朧Two?
なんでこの子だけ英語なのかな?って素で思ったことをご報告します
#そうじゃなかったよ
■今日のおクマちゃんのマダレ紹介は
よひょうさん(ツナじゃなくてつう?)
■シュテンから血人形の真実の意味を見せられたライの動揺は新感線版でも顕著で、ここがナマっぽいから後で真相がわかるときの衝撃が、嘘でしょー⁉︎ってなる。
今回も素で衝撃を受けてる顔してますよね。そんな酷い罠と思わなかったというのはほんとなんでしょう。
そこで本気で怒ってシュテンに挑もうとするキンタを庇ってライが制止する
嘘をつき通すためにキンタを自重させているということも考えられる
でも、ここは、キンタの血人形に危険が及ぶことを防ぐためにとっさに庇っていると思った方が尊いのでそう思っとくことにします。
■朧の亡霊?達を振り切って花道でのぶっかえりがありますが、なぜあそこでぶっかえるんだろうか
本当は王様ではないってことなのかな
ただぶっかえりたかっただけかな
ライが花道に行く前に舞台上で亡霊の人たち(ヤスマサとか)が後見的なムーブをするので、歌舞伎見る人は、予期しますよね。
じゃない人は、舞台上の勢揃いと、花道のライ、え、どっちみればいい?ってきょろきょろする。
花道花道、みんな花道見て、見逃しちゃうから見てって念じてました。
■コンタクト
前回見た時はカーテンコール時向かって左(つまり右目)が黒目の小さなタイプのカラコン、向かって右は黒目。
今日は両眼白でした
※追記 なんでカラコンしてるのかは歌舞伎夜話(古田さん猿弥さんゲスト回)で語られてました。配信アーカイブは12/31まで買える模様。この件、幸四郎さんに翻弄される松也さんにキンタ味があるw。
■宙乗りは左右に手振りをつけて見得をしてたので六方のように見えました
■オオキミやシキブが血を吐く衣裳何枚あるんだろうね
染まらない素材なのかな
今日はシキブちゃんの裳にも血糊が垂れてた。
裳も洗えるやつかな。血の方に秘密があるのかな。気になる。
■朧の森の大量の彼岸花
狐花から憑いてきてませんか…
12/21日夜 幸四郎ライ
■最前列。
舞台と客席の間に小さなスピーカーがいくつも配置されています。
そのひとつの前。やや上手。ツケと竹本のダイレクトな音が近い。
また、スピーカーから来る歌の歌詞がクリアに聞こえる。
音楽やセリフとナマのツケと竹本と目で見る絵にズレがないこと、歌詞が聴こえることがこれほど重要だったとは想像していませんでした。
ダンスの止めハネが音楽に乗って見える。
朧の森のオボロたちの登場から契約まで、歌、役者、竹本、と言葉が様々にリレーされていく。それがひとつづきに聴こえる。なるほどコレか。
こう聞こえれば歌にすべてを織り込んでも問題ない。
でもこれまで三回、いずれも一階で見て、このように聞こえたことはなくてだな、運なんじゃないのかな。
たぶんシネマになればそこが解決されますね。
理想的に聴こえるよう調整されることでしょう。
■幸四郎ライは初めから悪だってみんな言うけど、
…まあ、そうだけど、あの存在は良い悪いの軸で動いてない気がします。
マダレなんかは、若干、生きたり生かしたりする手段が世間で言う悪だったとか、お上が気に入らねえみたいなとこがあるんじゃないかな。
ライはそういう悪じゃないよね。息してるだけでそうなっちゃうんだな。
最初は歌舞伎風の見得をするキンタに対して自分も大仰な歌舞伎のような大衆芸能のような台詞回しをする時がウソのしるしにみえます
物語が進むとだんだん高麗屋伝統(?)の歌う台詞でウソをかたるようになる
2週間前はここまでではなかった
そうだった、(前)染五郎の新感線、こうだ。この日は昔見た新感線のイメージが想起されたし、現白鸚のことも浮かんだ
朧がこの人の為に書かれた芝居だと思い知らされます。
この日は言い直すところが多く調子が良かったはと言えませんが芝居を途切れさせない言い方でこちらの集中力も切れない。
濃い。圧倒される。
■シュテンが血人形の本当の恐ろしさを明かす所では怒りの台詞を言っているのはキンタですが、無言のライの心にナレーションを入れているかに見えました
幸四郎ライとキンタは元々別々で重なってくることがないんだけど、ここは二重映しに見える
わずかなシンクロ
■おクマちゃんの思い出せないおじさんの名前は
ドラえもんさんでした
おクマちゃん毎日大変だなあ
松也サダミツのホクロは眉間、遠縁の兵士では左の口元の下
■まつ虫くんが、最後にザバーッと回し蹴りした水が少し飛んできました。サービスサービス。
滝の水がじゃぁじゃあじゃない理由は生田斗真さんとの配信コンテンツで松也丈が言ってました
なるほどねえ
■宙乗りでは幸四郎はあまり手振りをつけてないので仁木っぽい
12/22 松也ライ
■6列目 上手
今回花道含む全景が見えるのはこの一回だけ
やっと花道と舞台が両方見える
すっきりしたー
音は一部マイクになんか接触してるっぽい音がありました
調子悪いときもあるから仕方ないな
でもそれをさっ引いても昨日の音にかなわない。
席難しいなあ。新作の音は予測つかないもんなあ
幸四郎ライの圧倒的な新感「染」健在ぶりを目にした後なので、ボルテージに落差があるかなと思いましたが
こっちはこっちで松也がライを自分の土俵に引き摺り込んだようで、「まってました!」っていうワルになってきたかも。
1幕の幕切れなど大変良うございました
今回の演出で一部歌舞伎が嘘の記号みたいになっているのには内心ひっかかりがあるのだけれど、松也版はどこまでがその手の演出かわからず、大真面目にやるイズムも感じられてだいぶ歌舞伎が表に出てきた気がします
■キンタにかける最後の響かない言葉のあたりが、明らかに軽いしらじらした言葉だったのが微かな愛おしみを感じさせる声音になっていました
また絡みのときの表情は、刀剣乱舞で義輝に寄り添って刺した時の宗近をおもわせる切なさがありました
え、変わったじゃん
これ、松也と右近のとくいなやつだ
でももうキンタには見えないんだよその表情
松也ライおバカさんだよね
どうしてこうなった
■千壽さん
おクマちゃんマダレチャレンジは忘れました
あー、わかるわかるってやつだったがなあ
ご飯を用意してくれたときは、土偶呼ばわりでした
最後に千壽さんが答え合わせを出してくれるらしいのでそれを待ちます
千壽さん、おクマちゃんとラジョウの踊り子以外に、亡霊の役もやってて、カーテンコールはちゃんとおクマちゃんで出てくるので、あれのどれかの中身がおクマちゃんなんだなあって亡霊を見てるけどどれかわからない
■ラスト泉水風立ち回りの、ライ被害者の会手ぬぐい巻きまつ虫くんはなんで顔半分青く隈取ってるのかと思ってましたが
チラシのビジュアルのライが半分藍隈なんですね
落武者狩りからのし上がったライを狩りに来る男の顔もまたライなんだ
■松也ラストのコンタクトレンズは両眼とも黒目の小さい怖いやつでした
やっぱ宙乗りのとき、たくさん見得してるよね
宙乗りの機構もちょっと左右に回転させてた
自分は、なんで飛ばすんだろう??と思う方なんですけど、飛ぶと決まってるなら面白い方がいいわな。
■この日隣になった方のお話が開演前に耳に入ってきましたが、
シネマの阿弖流爲が素晴らしかったので今度歌舞伎NEXTがあったら絶対行こうと思っていた
だが尾上松也はよく知らない
2人主役ということはダブルヒーローではないか…と。
阿弖流爲のイメージなら田村麻呂みたいなのが出ると思うよね。そこへ幸四郎サダミツでてきたら事故やん。
その後の幕間で会話を聞く限りすごく面白かったようなので安堵しましたが
たぶん、あちこちで事故が起こってるだろうなあ
12/25夜 松也ライ 楽
■2階最前下手
水避けビニールが背もたれに留めてあってびっくり。2階なのに?
宙乗りで銀ふぶきが降ってライがこっち向かって来ましたよ
ケーブル真下で、水が、ゲリラ豪雨の最初の2、3滴だけ降ってきたような、バラバラって降りでした。(奴はついに気象になったか)
この席、公演始まってだいぶしてから買い足したんですがなんで空いてたんだろ。あとから解放したのかな。
逆にここが空いてなかったら平日に来ようと思わなかった。
花道がすっぽんのあたりまでは見えて、
最初のほうの、エイアンの都へ向かうライとどこまでも追っかけていくキンタの希望にあふれる勢いが正面から見えてとても良かった。
ずっとこうだったらしあわせなのにって思わせるのが松也右近組ですね。
2階は殆どがスピーカーからの音で、かえって全ての音が統合されて、音声レベルも揃って聞こえて良かったです
次は2階のチケを多めにしようかな。
だが演舞場歌舞伎NEXTのノウハウ、次に使えるのはいつなのか。
そういえば、開演が数分押しましたかね。5分前のアナウンスがあってからだいぶ待ちました。そんな事珍しいね。なんだったのかな。
■ラジョウに転がり込んだライ、勢いつき過ぎて屋台の柱ぶっ倒してました。
周りの人やキンタがが流れを中断せずにさりげなく代わるがわる柱を支えつつ立て直すミッションがいとあはれ。
こわしちゃだめだよw。
千と千尋みたいな色遣いの町に、ジブリみたいな作画の菊三呂さん。これも見納め。
■中盤、強めの中声で押しまくって松也らしいです。歌舞伎以外の演劇のときの声っぽい。
菊五郎、松助の面影をチラッと見ることもありますが、だいたい松也で塗りつぶされた感じ。
(たまに僅かにミュージカル風味が漂うと高麗屋っぽいなって思うのがおかしい。)
松也の音圧に比例して時蔵や猿也の音圧も上がって、最後のほうだいぶ熱い対決になってました。
■シキブちゃんの槍投げが、スペシャルでしたね
投げる前に手振りで観客に手拍手を要求
盛り上がってからの投擲
プロフェッショナルぅ
続く場面で、ライがシキブへ披露する戦物語がきっちりして良く
たぶん、そんな大げさな…という反応を誘うところだと思うのですが、普通に歌舞伎として見て拍手しちゃう。
うー。次古典に出るのいつなん?
■ツナの夢から現実で鳳梨持って出てくるまでのライの早替わりが早過ぎるので心で数えてました。
鎧脱いで、頭も変わって、多分1分かからずにでてる
あの夢の中だけの鬘、あれいいなあ。ちょっとワイルドで
ツナの中のライってあれなんだね
■おクマちゃんチャレンジは
保健室でタバコ吸ってそうな人で、ジャイアンさん…でした
ドラえもんとジャイアンを兼ねる猿弥さんはすげえな
保健室でタバコ吸ってるって、なに?
笑ったものの、それなに?ってしばらく頭がそれに占有されて芝居に戻れなかった。不良かな?
■キンタとの立ち合いのやりとりのライ。今日は、わざとしらじらしくさせた声でも、もちろん本気の嘘でもなく、素の若い声に近かった気がする。その作っていない声も当たり前ですが、キンタはしりぞける。
ライが毎日の上演でどんな声音を使おうともキンタは台本どおりに「全然響かねえよ」って言わなきゃいけない。
だからライの出方がストレートに「響かない声音」でない場合筋がぶれる。
やる側としてもぶれると思う。僅かの時間でそれでもライを斬ると結論づけないといけない。
そのぶれが客的にはキンタの微かな惑いと思い切りに見えるのかもしれないなって思う。キンタ、ツラいよね。
■鬼ライのカラコンは瞳が小さめになるやつすごく怖いほどではないやつでした。
■千穐楽につき、予定通り(?)スタオベの観客に手振りで下に居ろと促しながら、小一時間かかるのでと座らせて、松也くん挨拶。
「朧の森の…なんだっけ」って振り向いてた。背後にでっかく朧の森に棲む鬼と書いてあるのを見に行ったのか、後ろのウラベ、サダミツに助けを求めたのか。
公演始まる前にもそんなことあったな。言えなくなるタイトルなんだなw
大向こう掛けたかった。男だったら掛けてたな。
朧の森の抜け道は博多に続いているらしいです。無事にたどりついてくださいね
2024.年末
*12/26 朧 千穐楽は松助さんの御命日だそうです。ふっと面影がよぎるとき過ぎた日々を思います。
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