とうかぶ2作目(そのに 新橋後半戦)

歌舞伎

歌舞伎 刀剣乱舞 東鑑雪魔縁。東京 新橋演舞場公演あと数日を残して、いまのことを書いておきます。

(いちおうおまじないも書いとくか。ネタバレあります。ひきかえせ。)

3週を経て、それぞれの言葉の意味合いが感じられる間になってきました。お芝居が締まってきた。
説明台詞さえ、覚えて喋ってる原稿から意味がわかってるセリフになってきた気がするし(これは主に獅童さんがw)、気になる違和感が減り、結果、やっぱ三日月宗近きれいねぇっていうふけりかたができるようになってきました。

初日見て、楽日見て、育つのが楽しいって言うお客さんも多いけど、自分はある程度出来上がってからの品質で見たい。だけど新作は一期一会。もっと見たかったなーって後悔もしたくなくて、早めに見始めて中日以降にやっと調子上がってきたじゃーん?ってなるの、あるあるなんだよなあ。
1か月(歌舞伎の稽古期間としては長い)稽古した演目でも、お客さんが入ると変わるものですね。

現在の全体的キーマンは歌昇さんではないか。
尼御台の雪之丞さんは初期からブレないで(少し濃いめの芝居になったかもしれないくらいで)安定しています。
これに対して物語を揺さぶる役割を担う実朝の歌昇さんがリミッターを外してきており、魅力が上がってきました。
古典の歌舞伎だとここまでやるのが良しとされないこともあり、普段は外せないタガじゃないかな。
8月に1か月やったらまた変わるでしょうね
配信でしか見られないと思うけど楽しみです。

前作もそうだったのですが
歴史はまあわかる。歌舞伎もそこそこわかる。
夫婦や親子の情、ワカルワカル。
いちばんわからないのが、カタナノキモチ?

2年前に、刀剣男士と元の主の間には「当然」特別な情があるものだというのがわかりづらい。でも何作も重ねれば刀剣乱舞歌舞伎のセカイではそういう約束があると定着するのではないか?とか書いた気がします。
刀剣乱舞を観るのにも素地がいるんだなとも書いたかも。

が、その素地とやらを全く身につけようとはせずに2年が過ぎまして、
その結果また、同じことに陥りまして(苦笑。)刀の心理(??)がどうも、わからない。
それがないと感動しどころが足りない疑惑がある。
無論、実朝様と倩子姫のあれこれなどは大変美味です。
だが、人間だけだと食い足らない。

ただあんまり理屈で理解しようと頑張るのも本末転倒な気がしますので、だんだん伝わる気配を汲み取りつつある第三コーナー付近です。

幕末チョットワカル、なので陸奥守吉行と加州清光の事情はわかります。
ていうか、刀剣男士どうしの関係は見えやすい。

3日目まで見て鬼丸国綱はよくわからんなと書いたけど(だって鬼が来るしか印象なくて(←怒られる))、さだめには抗えないと、尼御台に頭を下げて応答する思い入れが初日の頃より強くなっている気がしました。

うぉぁ?ってなったのは、三日月の男伊達の踊りで「ぬしさま参る」(普通に考えると恋人に手紙を出す時の宛先ですね)という歌詞にのせて指折り数える「ぬしさま」が刀的には元の主人達になるとこね。(と、イヤホンガイドが言っていた)
この子達には親子恋人でなく、主人しかいないんだと改めて知る。

審神者の命で任務についているのは言わば宮仕えでしょう。
そして元の主との関係は「わたくしごと」なんでしょうね。たぶん。
例えその手にかけても大義のため。けれど喪えば心がいたむ。
やがて命を落とすと知っていても、にっこり得心して死んでいってほしいものなのかもしれない。

髭切と膝丸は二人だけれど、寺子屋や熊谷陣屋になぞらえれば、冷徹に振る舞いながらのちに慟哭する一人の内面のようでもある。

実朝が最期に及び、髭切の顔を見て髭切と呼んだ後、膝丸に向いて膝丸と声を掛けるとき、自分の腹に突き立てたままの刀の柄をぽんぽんとゆっくり叩くんですね。あ、と思いました。
こどもの頭をぽんぽんして語りかけるような感じ。
これは最初に見た時は気づきませんで、膝丸のことを刀だと知っているかどうかの表現が無いと思ってました。あったではないか。

ここは、1作目の義輝様(右近くん)のあの表現がなかったら、私気づいてないかもしれないです。
このセカイではそういうことがある、とひとつ約束が積み上がった気がする。

自分には刀剣男士と現実の歴史人物というレイヤーが違うものの関係が直接は捉えづらく、光が反射するからものがあるって感知できる、みたいなとこがあるのかもしれない。
元の主との間になんらかのコール&レスポンスがあることで物語が揺さぶられるのを感じます。

直接捉えづらいと言えば政子と実朝の関係もそうで、この関係の表出のすべてが実朝様の独白にかかっているように思います。
実朝様の芝居上の責任が重大過ぎるけど、一種のモドリであり、ここに全部あるということでいいのかもしれん。カショーマンがんばれ。

ほかの気づきなど

  • 左近ちゃんの発声に以前より艶が出ていてよき。舞台の声になってきた。
  • 陸奥守のうっかり発言の後、膝丸や加州が邪険に扱う所のやり取りを毎回変えてきてますね
    最初は膝丸がちょっと突いて、加州に黙ってって言われるくらいだったのに、陸奥守が「強め」とか反応するから、どんどんバリエーションが。いちばんかわいそうだったのは膝丸に強めに突かれつつ「どけ!」って言われてたときね。
  • 獅童さんが左近ちゃんを笑わせにかかるのは気になりますねーそういうタガははずさなくていいと思うの。歌舞伎座でやろう。

獅童さんについては毛振りの回数が多すぎ問題もありますねw
私が見たうちいちばん長かったと思うとき120回くらいまで数えたんですが、ものにはよい加減というものがあるじゃんよ。赤頭がへろへろになってるじゃない。で、次に見たときは40回くらいになってました。でもまた100回を超えてて、どこまでいくんですかね。ほどほどがいいと思うよー。

まってぃーについては主さま参るの所をさっき書きましたけど、下駄や傘の扱いなどに引っ掛かりがなくなってました。
指を折る所の柔らかみや、閉じた傘を下ろしたまま手首で回す所など、そうそう、こういう振りを狙ってたでしょという所に収まってきました。

石橋以外の踊りにも出てるし大変なんだろうなあ。
家話の配信を見ましたが
昨年裏表太閤記のとき幸四郎さんが演出家的な目で決めた五人三番叟の振りを、やる段になったら踊るのが自分で大変だったっていうのを、もうほんとにこの人は的ポジションで見てた松也さんが、いま全く同じ事態に陥ってるの笑えますよね。
らせつみじんこ(じゃない)もギリギリまで本人で大変。(分身かどうかは顔よりは走り方で区別してました。ヒーローショーか。)

天王寺屋成分は全然足らないですけど
名もなき雲水の顔が見える席を取ったのでラストに賭けます。

まだ坂の途中。 20250723きくやまる

 

歌舞伎

Posted by kikuyamaru