シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』みたよ
シネマ歌舞伎は歌舞伎の舞台を撮った映像を映画として公開するもの。10年ほど前からあります。どうも食指が動かなくて見たことがなかったのですが、モノが阿弖流為とあらば別。
舞台でなくてもまた見られるなら見たい。
昨年、舞台を見たときの戯言ははてなのブログに書きました。
新橋演舞場 歌舞伎NEXT 阿弖流為 – kikuyamaru’s blog https://kikuyamaru.hatenablog.com/entry/2015/07/24/232641
そのときは13年前の阿弖流為を思い出しながら見ました。
今回は昨年の記憶を手繰りながら見ることになる。
解かれる謎を知って見るので自然、セリフの意味なども違って聞こえます。
あまりネタバレにならぬようにしますが、東西によらず、古来、本当の名を呼ばれるということは、呼んだ者の支配下にはいることを意味することが多い。そんなことを意識しながら見ると、どこで誰がどんなしがらみにとらわれたのか、その力関係がどこで変わるのかといったことが見えるかもしれません。
映画になってどうか?ですが、最初の幕のあたりで踊りのあいだ、カメラが振られるのは見づらい。元々は舞台だから、定点でもオッケーなんじゃね?と思ってしまう。あとから少し良くなります。
逆にカメラの威力が出るのは、クローズアップです。
阿弖流為に相対する立烏帽子の口惜しさと愛しさのいりまじった大きな目の表情など、舞台では見えないでしょう。あれはいいよね。七之助の魅力がよくわかります。
染五郎には刻まれた年輪と玉のような汗ががみえます。寄り過ぎー。
歌舞伎役者はちょっと離れたくらいがかっこよく見えるんだよ。(でもスキ)
ライブですと、掛け値なしにあの3時間超の舞台の間、大舞台と両花道を休む間も無く駆けずり回っている染と勘九の熱量、タフさがじかに感じられて、大変だなおい…て感じだった。映像では詳細が見えるにもかかわらず、ややドキュメンタリーにも似たフィルターがかかる。炎ではない、リアルな炎の絵を見ているような。
音。音楽は、普段の歌舞伎を見てる人はえぇっ??かもしんないけど元々あんなです。ロック?あれにもう少しうるさいツケ打ちがはいってた。多分ツケの音は音量を抑えてある。スピーディーな殺陣なんですが、途中見得が入るじゃないすか。見得にツケ打ちなかったらおかしいもんな。
それにシャリンという鈴のような音。これは元々の音。あと、多分、時代劇のチャンバラのような効果音は乗せてあります。ないと変なんですかね。
そんな感じで、ライブとは異なるものの、スジの力と役と役者の力は圧倒的。
キャラと世界設定をしてみたかっただけ、あとはアクションだけ、みたいなのを普段見てると、まあこんなもんかなあと物分りがよくなってしまいがちだが、"違うよ。舞台ってこうじゃん"って思い起こさせてくれる。(夜書いてるので2割引いてください)
クニとはなにか。個と統べるもの。なにがそれを支えるのか。二重三重になるその構造。その中で阿弖流為の強さ、田村麻呂の明朗さ、鈴鹿と御霊御前の神秘は、決して筋に飲み込まれず綾なす糸となってゆきます。
そして阿弖流為と共にヤマトと闘ったのは記録では母礼(モレ)とされていますが、それは誰か。何故その名が歴史に残ったのか?数奇な運命。あーんど、クマ子ーぉ。
そんな歌舞伎、時と場合とお金が許すなら通いたい。それを叶える2100円。お買い得っ。
一般の劇場では7/15日まで。東劇では29日まで。
あ、上映時間すごく長い、かつ最終週はたいてい変な時間なので気をつけて ^^;;
東劇(東銀座)行ける方は22日までが1日3回かかるのでお薦めです。。
予告編こちら→ https://youtu.be/_QktdU6sbQU
特設サイト→ http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/aterui/