真っ赤にながーれるー僕の血潮〜 (博多座 歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼 博多座 配信後追い 千穐楽)
2月24日、25日の博多座配信を後追いで見ました。
頭の中では ♪あんたーが王にー って歌が
意思とは関係なく鳴り続けております
(新橋は観劇済。博多は現地行けず。新橋のメモは本ブログのタグ 歌舞伎NEXT で。)
以下、観ていない方には全く伝わらないです。ごめんなさい。
映像ってなあ便利だけど不自由なものでフレームの外にあるはずのものが見えない。とうかぶのときもそうでしたけどね。
思えば有頂天家族の配信はカメラ6つどれでもお好きにご覧ください方式で、あれはよかったですねえ。
あそこまでいかなくても全景とスイッチングが見られたらよかった。
寄ったりカメラ振ったりして大事なものが捉えられなくなるよりは、引きで定点にしててくれたほうがありがたい。
そこは全景うつさんかーいってなったのは
キンタが落武者と戦っている時の上手のライ
ヤスマサ絶命な所
お手紙読み上げのときのツナ様とキンタ
血人形の契りを交わす所のキンタ(は、松也版は映っており、幸四郎版では映さず。)
あと、1幕の幕切れのところのキンタ(は、幸四郎版は比較的映っており、松也版では映らず。)
マダレが眼帯の男の縄を切ってから殺す段取り。
オオキミの敷居のひくーいで周り全員平伏のところ…とか。
これは、なんでも幸四郎版と松也版で動きが違うって噂だよ見せておくれよー。
さて松也ライの配信は当日つまみ食いして少し書いておきましたので
残った幸四郎ライの話を。
昨年の幸四郎丈、私の見たときは偶々ちょっと調子悪いかなと思うことが続きまして、
勧進帳の弁慶の最後の引っ込みなどなんとなくギリギリに見えたん。
この配信のライも六方で引っ込む時が同じ感じで、
おつらいところがあるのかなと一度思ってしまうと踊りもタテもそう見えちゃってこちらも、ううう…ってあまり集中できませんでした。三月にちゃんと休まれてるといいな。
序盤ヤスマサを倒す所などは刀が勝手に段取り通りに仕切っているというふうに見えて上手いですよねー。
あとね、朧の森の精霊とのやりとりで音楽や義太夫の間に挟む合いの手のセリフが実にしっくりきます。
このぴったり度合いは幸四郎ライの魅力だと思う
後半になると幸四郎ライって嘘ついて楽しいのかな?って思ったり。
松也のライは途中から憑かれたように喋りながらとまらなくなってしまう。
幸四郎ライって喋るときも暴走って感じじゃなく自分で喋ってる。
酔ってない、正気。正気が既におかしい。
その辺が朧の森に行かなくてもいずれは…と言われる所以でしょうか。
キンタとの最後の立ち合いの所は、幸四郎ライも松也ライも中身がどうあれその場をしのぐ為に言葉を掛けておりそれ故にキンタに退けられたのかなあと、今は思う。
前にも書いたけどここは毎度揺れるし、揺れたままにしておきたい所でもあります。
かつてそばにいたキンタにかけた言葉を
幸四郎は自動的に再生して
松也は仕舞い込んでいたどこかから探し出して、そうだ!この言葉でいいはず!って掛けてた感じだった
気づいてもいなかった自分の過去の仏ごころを手掛かりに一瞬で実はそうだったんだよって言葉を組み立てるさまもキンタにはわかったんだろうか。
かつてキンタは拠り所にしてたその言葉で裏切られたのだもの。
懐かしいアニキに言葉の裏を明かされた何よりもつらい体験を思い起こさせる言葉だもの。
選び間違えだよなあ。
もっとも、どんな言葉があったとて遅い、とは思う。
宙乗りの鬼、目が赤い。
あれ、新橋ではしてなかったっすよね?
あの赤は森と繋がってる赤かな。
見得も前より少し派手に見えました。
悪という字を彷彿とさせる形の公家のような隈で、名をライという鬼の完成という感じ
赤い色はあんな状態でもaliveだと感じさせるんだなというのが気づきではあります
あれは人じゃないけどいきてるんだろう
幸四郎の答えは赤。
(一方の松也は、鬼という漢字の原義どおりの死せるものなのであろう。白い。派手な宙乗りだけど、死装束ENDからのロスタイムかもしれない。まってぃーは他のとこでも全体的に見得が派手だったり、二段になったりして、そこは好きなとこ。)
花道で朗々と歌いあげられる演劇らしいセリフから
最後のペテンだぁ で、歌舞伎になってしまうマジックにはこの作品の性格が端的に顕れているように思います
それと、ようやく、あるのも良いかもねって宙乗りに出逢ったかもしれない。
鬼より怖い2月の本水もお疲れ様。
ほか色々
サダミツ(松也)
みなさんカーテンコールで楽から千穐楽(鏡文字)になってた額の文字よく読めましたね
自分、言われなきゃ読んでないわ
親戚からサダミツに戻って、字を書き直して
あっ逆だ、まあいいか、って出てきたのかなw
ツナ
松也回でも書きましたが、新橋からのツナの変化は顕著でした。
ツナがラジョウに来て色々のところ。
新橋演舞場のときはもう少し理知的で
他には目もくれず眼帯の男を一瞬で見つけだす剃刀のような切れ味がある反面、探す黒幕が誰かははっきり示さない、枠からはみ出さない感じだった。
博多ではもっとねっとりとマダレに絡んでいて黒幕はお前だろうと言わんばかりになっている。
ツナの感情の豊かさはほんとに変わったとこで、最初から熱めの鬼長官。ここでの燃える正義と終盤のライへの爆発的な激情は一貫性がある。
その前の宮中でとろんとライに言いよる所(尚、ウソ)の優しさ・艶も増していました。
来たる4月にはこんぴら歌舞伎があります。ツナ→お園→再びツナ→更にお園。がぜん面白くなってきました。
それと演劇に挑む女形としての時蔵が居てもいいんでは?外に出たって本道からはずれることがないのはみんな知っていると思うし、ちょっと見たいですよね。
シキブ
成人指定の生々しさで…の所
効果音がどきゅどきゅどきゅって感じの音だったのが
しゃーって感じの音に。何の音なのか??
(なんでかな。生々し過ぎたの?)
あとライの言ったことをそのままリピートするチャレンジが、脳内ワーキングメモリの大きな人なのをうかがわせます
お疲れ様でした(笑笑)
どんどこエスカレートしてるのはSNSで読んでたけど
なんであんなことに
あそびとか
上のシキブリピートもそうなんだけど、型から外れてのわちゃわちゃが増え
客が元を知らないとどうかな?って思う所がありました
殆ど全て動きに至るまで演出が付いてる中で、好きにやっていいと解放された場面が何箇所かできたということなのかな。
お手紙を渡し忘れておりました、からの、キンタとライがごちゃごちゃごちゃごちゃやってるの。
あれはなんか、筋がわかりづらくなりますね。
新橋のときくらいのあっさりでもよかったな。
花道で泳いでるし。
劇場のどれくらいまでそれを把握できたかしら。あれはさぁ、劇場にモニターがあって大写しとかしたほうがいいんじゃないすか。
逆に無くなってたとこもあって、ライとキンタが捉えられてのお裁きの場で、キンタがライに従ってオオキミに向き直ったりすると後ろの兵がいちいち座り直させてたのはなくなりました。
あれは意味わかんなかったんで、なくてオーライ。
ライとキンタに差をつけてるって意味だったのかな。
シュテン
シュテンはちゃんと見ると眩しいので目を逸らしてます。
これは直接みちゃダメなやつ。危険きわまりない。
シュテンの鎧を初めて見たときクリスタルドラゴン(…30巻出てた。買ってない気がする。)の戦士レギオンを思い出したんですよ。ああ、リアルだとこういう鎧なのかぁって。
新橋のときは、ちょっとそっくり返り気味でしたが、そういう生意気な偉さじゃなく、若い長として立つ雰囲気が出てきたようです
まだ太い声を作っていて、もっと自分の声が出てくるといいな
(牢屋の微妙なだんまりのメモ
12月に歌舞伎座でやってた加賀鳶にもっとずーっと長くてだいぶ眠気を誘う捕物のだんまりがあるのですが、
ああいう捕まえ合いや振り子のように2人で沈み込んでいくのとかあるんですよ。
12月のときは、ああ、密かに歌舞伎座とシンクロしてたのねーって思いました。
あのだんまりなんだっけ?って忘れそうだから書いておきます↑。
もう一個のだんまりはもっときっちり歌舞伎味でやれば良いのにって思う。蛇篭が中途半端すぎる。)
マダレ
自分は朧の森の登場人物で好きなタイプが思い当たりません。
ライもツナもシュテンも美しい、カッコいい、ではある。
でも人として好きかっていうとそうでもない。
若いんですよね。若くて、言い方は悪いけど自己中。
なにか、もうその若さに溺れることが出来ない年齢まで来てしまったよ。
そんな中でマダレはおとな。酸いも甘いも…な経験値と肝っ玉でいちばん頼れそう。
初めて歌舞伎版を見たとき、ワンピースに出てきそうだなって思ったけどw
マダレの芝居は新橋も博多も殆ど印象変わらずです。
毎回同じクオリティなのがえらい。
猿弥さんは同じことやってると飽きるらしいのでもうだいぶ飽きたはず。
メイキングに、口でツケの音を入れながら「ラジョウを仕切ってるのはオレでぇすぅ」が生まれるところが映っており、ああやって作ってるときは楽しそうですねえ。
(この「でえす」は、助六みたいな粋な男伊達が使うイメージ)
この配信についてたメイキング(特典映像)は細切れで稽古場のストーリーとか、インタビューの文脈がよくわからなかったのは物足りなく感じました。新感線的には、歴史が追われてて貴重なのかもしれないな。原初(新橋以前)の朧の森ってどんなだったんだろう。
いのうえさんの、言わば「型」から同時に生まれるバリエーションをリアルタイムで体験ができたのはよかったです。
歌舞伎はこうやっていのちを繋いできたんだろう。
いろいろと間に合わなくて見られてないものがあるけど、まだわたしらが見届けられるものはありそうで、これだからこの世界は楽しい。
ありがとよ。2人のライ。
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