私は何か書こうとしていたようだ(黄金の日日と音楽)

2021年8月30日劇伴,時代劇,黄金の日日

ときは2021年4月、日曜日の早朝から、週一回で黄金の日日(昭和53年(1978)の大河ドラマ)の再放送が始まっています。

ツイートでの実況を読んでいると面白いですね。みな異口同音に当時のキャストが昭和の名優ぞろいであり、多くが鬼籍に入っていることを語っています。50代以上の人は、善住坊の処刑のシーンがトラウマであるといい、もっと上の人は太閤記や国盗り物語を思い出しており、比較的若い人は、あるものは真田丸を、あるものは麒麟がくるを想起し、もしやあの場面はコレへのオマージュであったのか?と、様々な発見をしています。
のちに作り手となる方々がこの作品から影響を受け、自分の作品で再生産してきたあれこれのシーンについて、多くの人が原典に当たれる機会がもてたことは全くしあわせなことだと思います。当時のビデオ作品は残っているかいないかギリギリのところですから。(よく知られていることとは思いますが一応書いておくと、このあたりまでのNHKのビデオ撮影作品はマスターテープが上書きされて残っていないことがあります。ビデオテープが高額だったためです。フィルムでなかった故にほんの15年前のものが残っていないということが、レトロブームと呼ばれた1980年代後半には嘆かれていました。)

黄金の日日は私のマイベスト大河でもあり、それゆえに、ずーーっと前にも確か何か書いたよなーと探しましたら、出てきましたよ二十数年前の原稿が。1998年でした。つまり本放送から数えて「そして二十年後」のことですね。けれども作品の概要が書いてあるばかりで、自分の感想とかそういうものはないです。
実は、さらに遡ること数年前に、BSで再放送があったとき、当時一人暮らしをしていた部屋にはBSがなかったので、実家の親に頼んでカセットに録音(ビデオがなかった)してもらい、それを持ち帰って聞いては、手書きであらすじや萌えポイント(当時はそんな言葉はない)について、毎日毎日万年筆でイラスト入りの手紙を書いて友人に送りつけておりました。思えばコミュニケーションですらない酷いことをしてました。ごめんね当時の友人。
その反動ですかねえ、ネットを始めてしばらくは、客観的なことを記録することに邁進していました。そのころの原稿ですね。せっかくなので供養のため、一部の記述を載せて作品の紹介をしておきます。

この作品について

この作品は昭和53年(1978)の大河ドラマとして放映されました。
大河史上初めて、庶民を主人公にし経済という視点から歴史を描いたオリジナル作品として注目されました。また、フィリピンでのビデオロケも話題となりました。
配役では、主人公の助左=市川染五郎はもちろんのこと、やくざものや時代劇の脇役であった川谷拓三が善住坊役で、唐十郎主催の状況劇場の若手俳優、根津甚八が石川五右衛門役で人気となりました。(状況劇場からは唐十郎自身と李麗仙も出演。)
織田信長役には高橋幸治、豊臣秀吉役に緒形拳の「太閤記」コンビが復活。

時代背景と舞台

物語は永禄十一年、泉州堺(今の堺市)を織田信長の軍が包囲し矢銭(軍資金)二万貫を要求するところから始まります。信長が京に上洛をはたしたばかりのころのことです。堺は海に面しており、残りの三方を堀で囲んで守りとしていました。またどの大名にも組みせず会合衆と呼ばれる豪商たちの合議制によってものごとを決定する自由都市でした。外国の品々を積んだ舟が行き来し、伴天連の鐘が鳴る国際都市でもありました。
この町の豪商、今井の奉公人に生まれた主人公の助左(すけざ)はこのような堺の自由な気風と海へのあこがれを胸に育ち、やがて船乗りとなり、南海の呂宋(ルソン)の島と交易をするまでになります。
しかし、信長の許で世界に窓を開きかけていた日本は、信長の死とともに長い暗黒の時代へと向かっていきます。
秀吉は商いを一手に握るために堺を迫害し、さらに外国の侵略までも企てるようになり、自由貿易を求める助左とは対立を深めていきます。

1話のあらすじをまるまる書いてあるのも見つけたのですが、それを全話やろうとしたのだろうか。うそだろオレ(やりかねない)。全く思い出せないのですね。

ほかに音楽のことについて少し書いてあるのは見つかりました。(どこかに公開もしてある。さがさないでくださいw)
まだ録音媒体としてMDが主流だった頃、BSで再放送があったときに録った黄金の日日のカセットテープの音声をを元に、音楽のかかる部分だけを抜き出したMDをつくるというようなことをやっておりました。1シーン1シーンちまちまと。そこで気付いたのは、どこにも、ひとつとして、同じ演奏の流用がないことです。
後で知ったことですが、この作品に限らず、当時の大河ドラマは、映画と同様に各シーンごとに絵に合わせて音楽の録音をしていくので、普通の連続ドラマのようなバンクで繰り返し再利用されるBGMはないのです。
(※なお再放送に恵まれない大河ドラマMUSASHIは、モリコーネさんに音楽を頼んだので、これはさすがにあらかじめ録音したやつが来たらしいです。この話は、もはやソースはありません。当時そういうのを読んだ記憶のみです。)
ちなみに、もう再生できる機器がないのでMDは先日棄てました。しくじったかもしれんねw

このとき私が本当に書きたかったのは、毎回別の譜面でありながら美緒には美緒の、桔梗には桔梗の主題があり、それを聴けば音だけでも誰のシーンか分かる、という話…だったんじゃないかと思います。多分その時は手もとに映像がなかった。そして映像(DVD)を手に入れたときは、こんどはその情熱がなかったのではなかろうか。そのため書かずじまいになっている。
でも、私は今も、どのシーンにどのモチーフがかかるのかを、思い浮かべることができます。
たとえば、永楽銭の出てくるシーンがあったら(出てくるというのはちょっとネタバレかもしれんね)都度、そのバックの音楽を聴いてご覧なさいな。そして、それが最後に流れるのがどんなシーンか探してみてください。

この時勢で、外に出るのも不自由ですので、気が向いたらそうした音楽のことを書くかも書かないかも。

そうそう、再放送の船に乗るならそろそろ最初のマジックがあるから、次の日曜日には是非ご乗船を。